【 Bamboo Village Farm 】

野菜と想いをつなげるための シェアする農園

2016.3


竹村庄平さん

     東京都町田市生まれ、在住

     【経歴】

      2005年 大学卒業

      2012年 会社員時代(海外含む)

      2012年 長野県で研修

      2013年 高知の農業塾で勉強

        2014年 町田の農家で研修

      2014年 町田で新規就農

Bamboo village Farm



世の中って役割分担。ができることで恩返しがしたいんです

 ぼくはもともと、「食育」と「農育」をやりたくて農業を選んでるんです。農業はあくまで手段なんですよね。だからぼく他の農家の人と考え方とか売り方とか全然違うんで、びっくりすると思います。基本「量り売り」だし、段ボールで送る時もそのまま詰めて送るし、名刺は持たないし。

 できることをできる人がやって、不足しているコトやモノはお互いがシェアすればいい。そういう社会が本気で理想だと思ってるし、今自分ではその土台をつくってる最中なんです。それが自分にとっての「食育」と「農育」なんですよね。

 

「どんな農業をしてるんですか?」

という質問に対して、そう答えてくれたタケムラさん。

食育農育はまだわかるけれど… は、量り売り?シェア???まだまだとにかく「?」だらけ。

その答えは、畑やカフェなどへ案内しながら教えてくれました。


 ぼくは有機肥料…たとえば米ぬか、油かす、緑肥なんかをメインに使って、少量多品目で野菜をつくっています。種も厳選したものを使っています。だから自分で言うのもなんですが結構美味しいんですよね。

 

 実際に1年半ほどやってみてわかったのは、1人でやる仕事じゃないってこと。作業があまりにも多すぎる。だからぼくは最初っから、友達や知人に来てもらったり興味があると言ってくれた人たちを畑に招いてるんです。土と触れ合ってもらったり、野菜がどうできるかを体験してもらったり。それが食育にも農育にもなるでしょう?今では本当にたくさんの人が色んなタイミングで入れ替わり立ち替わりで来るから、10ヶ月目の妊婦さんも来たこともありますし、たまに畑に家族で来てビール飲んで寝っ転がってるおとうさんとかもいるくらい(笑)。畑に来てくれる人がお客さんになってくれたり、お客さんが畑に訪れてくれるから名刺も特にいらないんですよね。ぼくは大量生産してるわけではないので、そういう関係性でいたいと思ってるんです。

 

 本音を言うと、人に来てもらうことも実はけっこう大変なんです。その分ぼくは農作業できなくなるし準備も必要だから。でも今はそれでいいと思ってる。来てくれる人が喜んでくれて、それをきっかけに農や食に興味を持ってくれるのが一番だから。それが自分の役割。

 たまに「タケムラが一番働いてないじゃん!」て言われるけどね(笑)。

 

 今年と来年はそういう土台を広げて、そこまでについた知恵を使って効率化していきたい。そうすればもっと色んなことができるはずだから。

 


 今日はご案内できないんだけど、実は田んぼも借りてるんです。経験なしでもお米ってできちゃうんだ!って思った(笑)。もちろん色々当時やれることはやってみた結果だけど、ちゃんとできるんだなーって思った。やっぱり「農業」って言うとちょっと敷居が高くて遠い感じしちゃうんだけど、自分が農家になって食べ物を作るということがより身近になったんだよね。その体験を自分でしてから、さらに、まだまだ食と農への関心が低い人が多いこととその溝がまだまだ深すぎることを感じてます。


 ぼくは、きれいに洗ったりきれいに包んだりするのもやりません。買った人にやってもらうんです。だから送るときは、料金分を量って、そのまま新聞紙にくるんで段ボールに入れて終わり!メッセージもここ(段ボール)に書きます。

 洗ったりビニルに入れるとその分お金がかかってしまうので、結果、料金も高くなる。それは誰が負担する買っていったらお客さんなんです。そのお金を払うんであれば、ぼくはその分自分の野菜を多く入れてあげたい。

 地元で農業やっていると直売所やスーパーさんなどからお話もいただくんです。でもマージンの大きな卸し先とはやっぱり相性が合わなくて、今は全てお断りしています。仕事を受ければおカネにはなるんだろうけど、…やっぱりね。ぼくがやってるのはただの農業じゃなくて「食育」「農育」だから。


途中、運転しながらぼそっとこぼされた言葉がとても印象的でした。

 

 Bamboo Village Farmの方が、ぼくより理念が強いんです。ぼくは動物的にどんどん判断していくタイプなんだけど、Bamboo Village Farmはそうさせてくれなくて。戦いです。

 

竹村さんが普段見せない農業に対する「葛藤」を垣間みたような気がしました。

 

お忙しい中、私にも食と農を丁寧に学ばせてくださったタケムラさんでした。ありがとうございました!


・・・親友 佐藤貴彦さんとのシェアのカタチ・・・

「消費者と農家のギャップが大きいことが初めて分かった」

 タケムラとは小学校時代からの親友です。当時はこんなに喋る人じゃなかったです(笑)。農業始めてからより明るくなったよね。

 

 早朝にタケムラの畑で作業して仕事へ出掛ける、なんて日も珍しくないんです。そのくらい畑が面白いし、美味しいし、楽しい!自分が農作業するようになって一番思ったことは「消費者と農家のギャップが思った以上に大きい」ってことでした。これはタケムラが農作業やらなかったらずっと分からなかったことだと思う。だって、やってみるまで、野菜ができるまでがこんなにしんどいとは思わなかった!

 

 「シェア」するということは社会を生きていく上で大切なことだと、タケムラのようにぼくも思っています。労働力もそうだし、時間、おカネ、愛情、やりがい、手段…あらゆることを役割分担して、シェアする発想にみんながなればいいと思います。だから食育と農業って大切で。土と遊んでもらいたいし、もっと畑があっていいと思うし、農園の景色が綺麗なことを知ってほしい。社会の課題解決のあらゆる出発点になると思います。

 

タケムラさん「本当にそう。ぼくはもう、とにかくみんなにしっかりしたものを食べてほしくて!ぼくは自分のためにとても良くしてくれた人が多かったから、自分のやってることがその人たちに恩返しとなればと思ってます。」



・・・「わらべのうた」嵐さんとのシェアのカタチ・・・

「食を扱う人が成り立つ社会に必要なギブ&テイクなんです」

 うちのお店はもともとオーガニックのものや

 フェアトレードでの商品販売などをしているお店なんです。

 知人を通して竹村さんとのご縁ができて、

 すぐに「応援したい!」と思って扱い始めました。

 竹村さんのお野菜は、とにかく「自然のまま」。

 肥料まで自然にこだわった野菜たちは、お客様からも評判がいいです

 うちはちょっと入りづらい店構えなので、

 店先の野菜がご来店のきっかけにもなっています。

 販売は、私の方で泥をおとし袋詰めするスタイルと、量り売りと半々。

 量り売りが理想ですが、

 面倒なくお買い物を済ませたいお客様が多いのも現実です。

 竹村さんの理想と、そういった現実の間を埋めていくのが

 お客様と距離の近い、うちのような小さなお店の役割だと思っています。

 

【SHOP Information】

「わらべのうた」warabenouta.com

 東京都町田市常盤町3213-6/TEL:042-851-9677



・・・カフェ「嵐が丘」のオーナーさんとスタッフさんとのシェアのカタチ・・・

「いいお野菜は、新しいご縁もつれてきてくれるの」

 うちは本当に色々人が訪ねてくるんです。

 コーヒーでゆっくりしたいビジネスマン、お喋りしたい人、

 編み物しにくる人、絵の達人の方とかね。

 そんなお客様との日々の出会いともうひとつ、

 「いいお野菜にも出会いたいな」と思っていました。

 竹村さんがこの団地生まれの人だって聞いたので

 お野菜を卸してもらうようにしたら、

 入口にお野菜があることでご新規さんも来てくれて。

 だって、量り売りなんて楽しいでしょう。

 パセリやお花もリクエストしてもいいかしら!

【SHOP Information】

「嵐が丘」

 東京都町田市小山田桜台1-3



シェアする農園「Bamboo Village Farm」を訪ねて。

 タケムラさんが掲げているシェアのカタチ、聞けば聞くほどなんだか理にかなっているようで、でもそれはまだ誰も実現できていない新しい未来のカタチだと思いました。「農業界がやってないだけで、他の業界はフツーにやってること」と会話の中で何回かおっしゃっていましたが、タケムラさんがやろうとしていることは実は勇気や覚悟がいることなのではないかなと思います。

 少しずつ輪が広がって、そして実は潜在的に同じことを思っていた人たちが集まって、いずれそれが社会を形成するひとつになる。新しい光を見たような、そんな気分でした。

私は「畑から生まれたものは、その人っぽい味がする」と常々思っています。タケムラさんの野菜には共通して言葉にできない独特さがありとても不思議に思いました。それを伝えたところ「それは、たくさんの人々が愛情をかけてくれているからだと思います」と答えてくださいました。

 

あらゆるものをシェアすること。役割分担をすること。

 

これから、タケムラさんの畑から野菜のほかに何が生まれて何が育っていくんだろう。また、食べて、感じたいと思います。

【企画編集/取材/撮影/文/デザイン】江藤 梢